1.学校法人Yは、人事院勧告に準拠して給与規程を改定し、11月の理事会で、教職員の月給額の引き下げを決定した上、12月期の期末勤勉手当の支給額について改定後の給与規程に基づいて算定した額からその年の4月分から11月分までの給与の減額分を控除するなどの調整をしてその支給額を定めた。
これに対し教職員Xらは、期末勤勉手当が一方的に減額され、一部しか支払われなかったとして、その残額の支給を求め提訴したもの。
2.福岡地裁は、11月の理事会による金額決定後は全額支払われており未払はないとして請求を棄却した。福岡高裁は、従前実績を下回る支給額が認められるためには個別の労働者側の同意又は特段の事情が必要として、福岡地裁判決を取り消し、Xらの請求を認容した。
これに対し最高裁は、原判決を破棄し、控訴を棄却し、地裁判決の結論を正当とした。
期末勤勉手当の支給については、給与規程に「その都度理事会が定める金額を支給する。」との定めがあるにとどまり、具体的な支給額又はその算定方法の定めがないことから、前年度の支給実績を下回らない期末勤勉手当を支給する旨の労使慣行が存したなどの事情もうかがわれない本件においては、期末勤勉手当の請求権は、理事会が支給すべき金額を定めることにより初めて具体的権利として発生する。
本件期末勤勉手当の支給額については、5月理事会における議決で、算定基礎額及び乗率が一応決定されたものの、人事院勧告を受けて11月理事会で正式に決定する旨の留保が付されたことから、5月理事会において本件各期末勤勉手当の具体的な支給額までが決定されたものとはいえず、本件期末勤勉手当の請求権は、11月理事会の決定により初めて具体的権利として発生したものと解される。
したがって、本件期末勤勉手当において本件調整をする旨の決定は、既に発生した具体的権利である期末勤勉手当の請求権を処分し又は変更するものであるとはいえず、この観点から効力を否定されることはない。
引用/厚生労働省サイト