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多様な正社員

多様な正社員とは

多様な正社員とは、従来のフルタイムの正社員とは異なる就業条件が設けられた、非正規雇用と正社員の中間的な雇用形態です。

企業によっては、ジョブ型正社員や地域限定社員、エリア限定社員などと呼ばれる場合もあります。厚生労働省によると、限定正社員とは、従来の正社員に比べて、配置転換や転勤、仕事内容や勤務時間などの範囲が限定された正社員のことを指し、限定正社員の導入目的には、ワークライフバランスの向上や正規雇用と非正規雇用の格差緩和などが挙げられます。

限定正社員の就業条件は、勤務地、職務、勤務時間のいずれかが限定される場合や、勤務地と職務内容などが複数限定される場合があります。

この制度は、労働者にとっては、長期的な雇用を求めながらも、家庭や介護などの事情で勤務時間や勤務地を限定したい場合に選択肢が増え、企業にとっても多様な人材を確保し、組織の多様性を成長につなげることができます。

近年、企業において「多様な正社員」を導入している割合は約5割に達しており、その導入理由として、「ワーク・ライフ・バランス支援」、「優秀な人材確保」、「従業員の定着」などが挙げられています。

 

多様な正社員のパターン

1.勤務地限定正社員

勤務地限定正社員は、就業する地域を限定した正社員です。企業によって異なる勤務地限定の範囲には、自宅から通える範囲内での異動があったり、都道府県を越える異動もあるが、転居は伴わないなど様々なものがあります。勤務地を限定することにより、転勤や長距離通勤が困難な社員の継続雇用を可能にする場合があります。

 

2.職務限定正社員

職務限定正社員は、職種や仕事内容を限定して働く正社員です。特定の業務を集中して担当することにより、専門性の高いプロフェッショナル人材を育成することができる他、担当業務の効率化や生産性の向上を図ることができます。

 

3.勤務時間限定正社員

勤務時間限定正社員は、働く時間や時間帯が制限された正社員のことです。

短時間正社員、残業免除等正社員、勤務日数限定正社員に分類されます。育児や介護、副業などの理由により、フルタイムで働けない場合に利用されます。副業やボランティアなどをしながら働くことができるため、近年需要が高まっています。

企業側にとっては、限定正社員の採用は労働力不足に対応する一つの手段として注目されています。

また、労働者側にとっては、ライフスタイルや家庭の事情に合わせた柔軟な働き方ができるため、働き方改革の一環としても注目されています。

しかし、限定正社員は「非正規社員」という扱いになりやすいため、長期的なキャリア形成や安定した雇用を望む労働者には不利な雇用形態となる場合もあります。企業側も、育成した人材が他社に移ってしまうリスクや、人事異動が難しいなどのデメリットも考慮する必要があります。

限定正社員の利用に際しては、企業と労働者双方にとってメリットを最大化し、デメリットを最小化する取り組みが求められています。

 

多様な正社員導入の労働者側のメリット

限定正社員として働く場合、以下のようなメリットがあります。

1.プライベートと仕事の両立が可能

限定正社員は、転勤や残業を避けてプライベートと仕事を両立しながら働くことができます。例えば、子育てや介護などのプライベートな事情を抱え、働ける時間に制約がある方には適した働き方です。また、副業を行う場合にも、本業での労働時間を抑えることができ、副業に注力する時間を確保できます。

 

2.安定した収入を得られる

限定正社員は、「無期雇用」がベースとなるため、安定した働き方を実現できます。毎月安定した収入を得られ、昇給に関しても正社員と同様に設定されているケースもあります。

 

3.精神的な負担が少ない

限定正社員は、通常の正社員よりも精神的な負担が少ない傾向があります。正社員であれば、様々な制約や責任が伴う仕事が多いため、自発的に残業を行うことが多くなる可能性があります。しかし、限定正社員はこういった精神的な負担になることが少なく、心理的な余裕を持って仕事に臨むことができます。

 

4.才能を活かしたキャリアアップができる

限定正社員であれば、専門性を高めることができ、自身の才能を活かしながら働くことができます。

また、長期的に働くことで、安定したキャリアの形成を行えます。その領域のスペシャリストとして経験や知識の習熟ができるため、キャリアアップしやすくなります。育児や介護などで忙しく、両立しながら働かざるを得ない人であっても、必要なスキルや資格を習得できます。

勤務時間を限定する場合には、キャリアアップのための勉強に充てる時間を多く取ることができるため、スキルアップに積極的に取り組むことができます。

また、自分自身のスキルアップが会社や組織の業績向上に貢献することもあるため、限定正社員であっても自己成長に取り組むことは重要です。

 

多様な正社員導入の企業側のメリット

1.創造性や革新的なアイデアの促進

多様な人材が集まることで、異なる視点やアイデアが生まれ、創造性や革新的な取り組みが促進されます。多様なバックグラウンドを持った人材が、企業のビジネスに新たな視点を提供し、新しいアイデアや製品の開発につながることが期待できます。

 

2.企業イメージの向上

多様な正社員を採用することで、企業のブランド価値が向上することが期待されます。企業が多様な人材を受け入れることで、ダイバーシティーを促進し社会的責任を果たしている企業として認知され、顧客からの支持を得ることができます。

 

3.人材の確保・定着の向上

多様な正社員を採用することで、企業は優秀な人材の確保や定着を促進することができます。多様な人材が働きやすい環境を提供することで、企業にとって必要な人材を確保し、定着率を高めることができます。

 

4.国際競争力の強化

多様な正社員を採用することで、企業はグローバルな視点を持つことができ、海外市場での競争力を強化することができます。多様な人材が働くことで、グローバルなマーケットに対応するための戦略やビジネスモデルの開発が可能になり、企業の国際競争力を高めることができます。

 

 

多様な正社員の雇用管理に関する留意事項

1.労働者に対する限定の内容の明示

転勤や配置転換に関する紛争を未然に防止し、労働者がキャリア形成の見通しを持ちやすく、ワーク・ライフ・バランスを実現できるようにするとともに、企業にとっても優秀な人材を確保しやすくするためには、勤務地や職務の制限がある場合は、制限内容を明確に示すことが必要です。

 

2.多様な正社員への転換制度

非正規雇用の労働者が希望すれば、雇用を安定させながらキャリアアップや勤続に応じた処遇を受けられるよう、多様な正社員への転換制度を設けましょう。また、労働者のワーク・ライフ・バランスの実現や、企業の優秀な人材を確保・定着するためにも、従来の正社員から多様な正社員への転換制度を用意することが重要です。

 

3.いわゆる正社員と多様な正社員間の均衡処遇

多様な正社員といわゆる通常の正社員間で不公平感を生じさせず、モチベーションを維持するためには、両者の処遇に均等を保つことが重要です。

 

4.いわゆる正社員の働き方の見直し

多様な正社員を効果的に活用するためには、通常の正社員の働き方(所定外労働、転勤や配置転換の必要性や期間など)を再検討する必要があります。

 

5.人材育成・キャリア形成

労働者が職業能力を計画的に習得できるよう、職業訓練の機会を提供すると同時に、中長期的なキャリア形成に役立つ専門的かつ実践的な教育訓練を支援することが必要です。

 

6.制度の設計・導入・運用に当たっての労使コミュニケーション

多様な正社員を円滑に導入・運用するためには、制度の設計・導入・運用にあたって、労働者に対して十分な情報提供と、労働者との十分な協議を行うことが必要です。

 

7.事業所閉鎖や職務の廃止などへの対応

勤務地や職務に限定があっても、事業所の閉鎖や職務の廃止によって直ちに解雇が可能というわけではありません。事業所の閉鎖などに直面した場合は、解雇を回避するために配置転換などの措置を可能な範囲で講じることが必要です。

 

引用参考/厚生労働省サイト

 

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