日本は少子高齢化が進み、将来的には労働人口の減少が避けられない状況です。また、育児や介護との両立など、働く人々のニーズも多様化しています。
政府は、このような状況に対応し、働きやすい環境を整備し、労働者一人ひとりの生産性を高めるために、長時間労働の是正や柔軟な働き方の導入など、様々な施策を打ち出しています。
これらの施策は、総称して「働き方改革」と呼ばれ、2019年4月から順次施行されています。その中でも、「同一労働同一賃金」は、働き方改革の一環として導入された制度です。
同一労働同一賃金を実現することで、企業側にも多くのメリットがあります。
非正規社員の待遇改善により、人件費の上昇があっても、生産性や商品・サービスの品質が向上するといったメリットも期待できます。そのため、同一労働同一賃金の実現は、企業の成長や発展にとっても重要な要素になります。
同一労働同一賃金によって非正規社員の待遇が改善されることで、正当な待遇を受けられるという安心感が得られるため、有期雇用労働者やパートタイム労働者の求人に応募する人が増える可能性が高まります。また、コンプライアンスを遵守している企業や、良好な労働環境を提供している企業は、求人応募者が増える傾向にあります。
正規雇用者との不合理な待遇格差が解消され、待遇が改善されることで、非正規社員の労働意欲向上に期待ができます。
同一労働同一賃金に対応することで、非正規社員の待遇が改善され、離職率の低下も期待できます。これにより、企業側は人材確保の安定化につながります。
厚生労働省のガイドラインでは、教育機会も平等に与えることが求められています。
非正規社員にも正社員と同様に、同等の教育を施すことでスキルアップにつながります。
同一労働同一賃金に対応することで、企業には多くのメリットがありますが、その一方でデメリットも少なからずあります。
同一労働同一賃金に対応するためには、まず正規雇用者と非正規雇用者との待遇差がどのように生じているかを検討する必要があります。給与、賞与、手当、休日などの各項目を分析し、非正規雇用者の意見も取り入れつつ課題を抽出することが必要です。
非正規社員の賃金を同一労働同一賃金に対応することで、人件費の増加が懸念されます。一方、同一労働同一賃金による非正規雇用者の労働意欲やスキルアップによって、売上増加につながる可能性もあります。企業側は、賃金を上げたことによる人件費の増加を収益増につなげる施策や戦略の検討が必要です。
同一労働同一賃金に対応する中で、企業側は正社員と非正規社員との待遇差を見直す必要があります。待遇差が生じる要因や待遇の決定方法など、説明義務も生じます。そのため、能力や勤続年数、経験などを考慮して待遇差をつける場合でも、納得できる説明をすることが求められます。
同一労働同一賃金を実現することで、労働者側側にも多くのメリットがあります。
同一労働同一賃金の原則により、同じ仕事をする労働者には同じ賃金が支払われるため、労働者は仕事に対するモチベーションが高まります。同僚との賃金格差がないことで、誰もが公平に扱われていると感じることができます。
同一労働同一賃金が実践されることで、労働者は自分の努力や貢献が正当に評価されていると感じることができます。そのため、仕事に対する満足度が向上することがあります。
同一労働同一賃金が実践されることで、企業は正当な賃金を支払うことが求められます。これにより、企業は人材を集めるためにより良い条件を提示する必要があり、結果的に雇用の促進につながることがあります。
同一労働同一賃金が実践されることで、同じ仕事をする労働者には同じ賃金が支払われるため、社会的不平等が是正されることがあります。これにより、貧困や格差の問題が改善されることが期待されます。
同一労働同一賃金への対応は企業の責務です。基本給、賞与、手当、福利厚生、教育訓練など、様々な面において、正社員と非正規社員の間に不合理な待遇差が生じないよう努める必要があります。
同一労働同一賃金に対応することで、人件費の上昇や待遇差の見直しが必要になるなどの影響もありますが、応募者の増加や離職率の低下、非正規社員の労働意欲やスキルアップなど、様々な良い面もあります。
また、正社員と非正規社員の間に不合理な差がなくなることで、多様な働き方が選択でき、誰もが活躍できる活力ある社会の実現につながります。
同一労働同一賃金について正しく理解した上で、企業は自社の規定を見直し適切に対応することが大切です。