「リカレント教育」は、社会人が仕事や生活で必要とされる知識や技能を身につけるために行われる教育です。成人教育や継続教育とも呼ばれ、オンライン教育や通信教育、セミナー、研修会などが提供されます。自己啓発や趣味の分野における学習も含まれますが、主な目的は職場や生活に必要なスキルや知識を身につけることです。
リスキリングとは、社内で働きながら必要なスキルや知識を持っていない従業員に対して行われる教育であり、従業員は会社で学びます。
一方、リカレント教育は、従業員が退職や休職することなく、大学やビジネススクールなどの教育機関で新しいスキルを身につけることを指します。
教育機関で新しいスキルを身につけた後には、一時的に休職していた会社に戻ったり、新しい会社に入ったりして働くこともあります。
リカレント教育は従業員自身が仕事で求められる能力を磨き続け、自己実現につながるために自発的にスキルアップする学習を行うものである一方、リスキリングは会社の変革に向けて必要な人材を揃えるために会社が主導して従業員に行う教育と言えます。
リカレント教育は、従業員が経験を積んでいく中で必要となる新しいスキルや知識を学ぶことができるため、スキル・専門性を高めることができます。企業が業務に必要なスキルを教育し、従業員がそれを習得することで、企業が持つ技術やノウハウの蓄積や新たなビジネスの創出につながります。
リカレント教育による従業員のスキルアップにより業務の効率が向上すると企業の業績向上につながり、従業員だけでなく企業にとっても大きなメリットを生みます。
生産性の向上は、コスト削減や顧客満足度の向上など、様々な面で企業にプラスの影響を与えます。
リカレント教育を受けた従業員は、その分野においてスキルが高いため、他の従業員と比べて昇進や昇給の機会が増える傾向にあります。また、リカレント教育で習得したスキルを生かして新しい業務に携わることで、やりがいを感じることができます。
リカレント教育を企業で推進するには、多額の費用がかかることがあります。
受講費・学費や社内設備の準備が必要となるため、費用対効果を慎重に判断する必要があります。また、多数の従業員が同時期に申し込みをすると、経費が大幅に膨れ上がる可能性もあるため、長期的な目線で取り組む必要があります。
リカレント教育の環境を整えることも大切です。質の高い知識を習得するためには、勤務時間や業務負担から見直し、学習へ割く時間を確保する必要があります。
残業や休日出勤を減らすなど、学習環境を整えるための改善策を検討することも必要です。柔軟な学習カリキュラムに対応できるようにすることで、従業員が無理なくリカレント教育を受けられる環境を整えることができます。
厚生労働省が公表している「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」によると、リカレント教育をスムーズに導入するためのポイントがいくつかあります。
特に重要なポイントを下記に示します。
また、労働者の学び・学び直しを促進するには、なにより労使が「協働」して取り組むことも重要です。
リカレント教育は、従業員が再学習をすることを目的とした教育です。したがって、従業員と経営層がその重要性を共有することが必要です。経営層は、従業員が主体的に学びに取り組める環境を整備することが重要です。
企業がどのようにリカレント教育を推進しているかを丁寧に説明し、経営目標と学び直しの方向性を合わせることが必要です。
従業員のリカレント教育は、管理職が最も把握しているため、必要なサポートを行うことが重要です。
管理職が、従業員のキャリア形成を支援することに加え、企業が管理職等の現場リーダーの支援に取り組む必要があります。
リカレント教育を促進するために、管理職向けの研修にその内容を取り入れることも有効な方法です。
リカレント教育は、一定期間継続して取り組む必要があるため、学習計画などをしっかりと立てる必要があります。しかし、中長期的なキャリア形成まで考えると、社内のリソースだけでは対応できないこともあります。
そのような場合には、キャリアコンサルタントなどの外部の専門家と連携し、従業員の学び直しに向けたアドバイスを受けたり、学習プランの策定に協力してもらうことが大切です。自社にはないノウハウを得ることで、リカレント教育をより充実したものにすることができます。
リカレント教育を実りあるものとするには、従業員同士が学び合うことが必要です。特定の従業員だけに学び直しの機会を与えると、不公平感が出る恐れがあります。
リカレント教育を導入する際は、基本的に全従業員を対象にし、個々のキャリア形成に必要なプランを立てていきましょう。従業員同士が自律的に学びを深めることで、より充実した学び直しの機会となるはずです。