「ハラスメント(harassment)」とは、英語で「嫌がらせ、いじめ、人を困らせること」という意味を持つ言葉です。
ハラスメントは、様々な場面において起こる「嫌がらせ」や「いじめ」を指します。その種類は多岐にわたりますが、基本的には「他者に対して作為的・無作為的な関係なく、行動や発言によって相手を不快にさせ、尊厳を傷つけ、不利益を与え、脅迫するなど」という意味合いがあります。最近では、「相手が不快な感情を抱けばハラスメント」という簡潔な定義も増えています。
厚生労働省の令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況によると、「いじめ・嫌がらせ」などハラスメントの相談件数は10年以上トップで、解雇や退職などの他の相談件数よりも圧倒的に多い件数になっています。
「セクシュアルハラスメント」とは、意識的であれ無意識的であれ、相手に性的な不快感を与え、相手自身の尊厳を傷つける行為を指します。セクシュアルハラスメントには、「ボディタッチ」「性的行為の強要」「性的表現を意識させる発言」などの明確なものだけではありません。
セクシュアルハラスメントは、「対価型」と「環境型」に分類されます。
「対価型」とは、行為と引き換えに優遇などの対価を提示する、または行為を断った相手や行為に訴えを起こしそうな相手に報復的な行動をするなどの行為です。
「環境型」とは、職場環境に性的な要素を持ち込む、または行為が繰り返されることによって、従業員に働きにくさを感じさせることを指します。
最近では、職能や待遇に性別の違いを感じさせる行為もセクハラと見なされるようになっています。
従来パワーハラスメントは身体的な苦痛を与えることと捉えられていましたが、実際に暴力を振るう、物を投げつけるなどの「身体的攻撃」や、人格を否定する言葉や合理性を持たない長時間の叱責、他者の前での大声での叱責、能力を否定し罵倒するような発言などの「精神的攻撃」以外にも、「人間関係からの切り離し」「過大な要求」「過小な要求」「個人の侵害」などもパワーハラスメントに含まれます。
「マタニティハラスメント」とは、妊娠中、出産直前、子育て中の女性に対する嫌がらせを指します。
具体的には、妊娠を報告した女性社員に解雇や降格、減給といった不利益処遇を行う、職場環境として妊婦に配慮せずに過酷な業務を強要する、退職を余儀なくされるような状況に追い込む、といったことが挙げられます。
これらの行為は、労働基準法や男女雇用機会均等法、育児・介護休業法などの法律で禁止されており、企業は防止策を講じることが求められています。出産後も女性が職場に復帰しやすい環境を整えることが、企業としての責務と言えます。
男性社員が子育てを理由として育児休暇やフレックス勤務、時短勤務を取得する際、人事評価が低下することを示唆したり、取得を認めずに非難したりする行為をパタニティハラスメントと呼びます。現在、人材募集において主婦・主夫の双方を採用することが求められており、子育ては女性だけのものではないという価値観の見直しが必要です。
ケアハラスメントとは、社員が職場で働きながら家族の介護をしている場合に、上司や同僚から受ける嫌がらせを指します。具体的には、介護のために時短勤務や休暇を申請すると、人事評価や昇進に影響すると言われたり、他の社員に比べて業務の負担がかかると言われたりすることがあります。
近年、企業の中で残業時間の削減が推進されるようになりましたが、その一方で時短ハラスメントという問題が増加しています。
時短ハラスメントとは、労働時間の短縮を要請しながら、業務の調整や効率化に取り組まない企業側の姿勢によって、従業員に業務量が増えることを指します。
アカデミックハラスメントは、学歴や教育環境、知識などを背景に、相手に劣等感を抱かせるような発言や行動をすることを指します。
かつては高学歴者によるものが多かったとされていましたが、今では実力・能力や苦手な分野に対する攻撃的な言動もアカハラと見なされるようになっています。
アルコールハラスメントとは、飲酒に関連する嫌がらせ行為や人権侵害を指します。具体的には、「飲みニケーション」の強要や、飲酒を拒否する人に対する配慮不足などが該当します。
また、酔っての迷惑行為もアルハラに含まれます。
「ジェンダーハラスメント」とは、一般的な性別役割分担のイメージに基づいて、相手を批判や嫌がらせ、特定の業務や行動を強要する行為を指します。
「男らしさ」「女らしさ」といったステレオタイプな役割分担に基づく言葉や行為、性別を理由とした業務分担や評価の不公平なども、ジェンダーハラスメントの一例となります。