固定残業代とは、実際の残業の有無、実労働時間に関わらず、時間外労働、休日労働、深夜労働に対して毎月定額の残業代を支払う制度です。
制度導入に際しては従業員の勤務状況を適節に把握して固定残業時間を設定することが必要です。
時間の設定については会社の裁量次第ですが、あまりにも長時間に設定した場合、労働時間単価が最低賃金を下回ったり、労働基準法に抵触することもあるため注意が必要です。
また、労働条件通知書による明示、就業規則への記載、法定労働時間を超えて働かせるときは、36協定を締結、労働基準監督署に届け出る必要があります。
*固定残業代の明示については次の行政指針があります
・固定残業代を除いた基本給の額
・固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法
・固定残業時間数を超える時間外労働に対して割増賃金を追加で支払
仕事の効率や能力の劣る従業員の時間外労働によって残業代が支給された結果、効率よく仕事を行った従業員の給与が安くなってしまうような状況が改善され、従業員の不公平間の解消につながります。
例えば、同じ条件で雇用されているAさんとBさんが、同じ業務をこなすのに、Aさんは残業が必要ありませんが、Bさんは残業が必要な場合、同じ業務内容と業務量でもBさんの方が残業代が発生する分給与分が高くなりますが、固定残業代を導入することによって残業代の多寡による不公平感が解消されます。
従業員の労働時間が毎月一定までは給与が変わらないため、給与計算が効率化され、給与担当者の業務負担が軽減される。
会社は、固定残業代の制度を導入することで人件費が大きき変動することがなくなり、人件費を的確に把握できる。
休職者が「基本給+固定給」を基本給と誤解してトラブルに発展する可能性があるため。労働条件を明示する際、十分な配慮が必要となります。
固定残業の設定時間が長すぎる場合は、基準賃金が最低賃金を下回ったり、労働時間が労働基準法に抵触する恐れがある。
昇給等、基準賃金の変更があった際は、都度固定残業代の見直しが必要となる。
固定残業代は、設定された固定残業時間をもとに次のとおり計算します。
固定残業代=1時間当たりの賃金額(*1)×固定残業時間×割増率
(*1)1時間当たりの賃金額=月給額÷月平均所定労働時間
月の平均所定労働日数=年間の所定労働日数(365日-1年の所定休日合計日数)÷12月
月平均所定労働時間=月の平均所定労働日数×1日の所定労働時間
1時間当たりの賃金額=月給額÷月平均所定労働時間
*月給額を月平均所定労働時間で除すと1時間あたりの賃金額が算出できます。
月給額は、給与から以下の手当等を控除した金額となります。
➀家族手当、②通勤手当、③別居手当、④子女教育手当、⑤住宅手当、⑥臨時に支払われた賃金、⑦1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
ただし従業員に一律に支給している場合は、これらの手当も含めて計算する必要があります。
従業員の勤務状況を適切に把握して、どの程度の残業時間が見込まれるかを想定し、残業時間を設定する。
時間外労働の割増率については、労働基準法で25%以上の割り増しが規定されています。
通常は割増率を25%としている会社が大半と思われます。