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ワークシェアリングとは

ワークシェアリングとは

ワークシェアリングとは、1つの業務を複数の従業員で共有して分担する取り組みを指します。この言葉は、ワーク(仕事)とシェア(共有)の2つの単語を組み合わせて作られたものであり、元々は欧州で導入された概念です。

ワークシェアリングの主な目的は、雇用の創出と従業員の負担軽減です。

 

ワークシェアリングが注目されているわけ

ワークシェアリングが国際的に注目を浴びた背景には、高い失業率と過酷な労働による心身の健康被害にあります。

ワークシェアリングは1人の仕事を複数人で分担することで、多くの雇用機会を創出することが可能です。そのため、ワークシェアリングの導入によって失業率を低下させる効果が期待されます。労働市場において需要と供給を調整し、雇用の拡大を図ることができるのです。

また、過酷な労働条件によって心身の健康が損なわれてしまう労働者にとっては、ワークシェアリングの導入によって1人当たりの仕事量が減少し、個人の負担が軽減されることで、労働者の心身の健康状態を改善する効果が期待されます。

労働者が健康でバランスの取れた働き方を実現することは、生産性の向上にもつながるでしょう。

ワークシェアリングは、失業率の低下や労働者の健康改善、企業の効率性向上など、様々なメリットをもたらす可能性がある取り組みです。そのため、多くの国や企業で積極的に導入され、社会的な課題の解決や持続可能な労働環境の構築に寄与しています。

 

ワークシェアリング導入のメリット

◆企業側のメリット

・生産性の向上

ワークシェアリングは、複数の従業員が仕事を分担することで、業務の効率性と生産性を向上させる効果があります。タスクの分担によって各人の専門性やスキルを最大限に活かし、効果的な作業の実施が可能となります。また、業務の負荷が均等に分散されるため、疲労やストレスの軽減にもつながります。これにより、作業の品質やスピードが向上し、生産性が向上します。

 

・従業員の満足度向上

ワークシェアリングは従業員の満足度向上にも寄与します。仕事の負担が分散されることで、個々の従業員はより適切な作業量やスケジュールで働くことができます。

これにより、労働者はバランスの取れたワークライフバランスを実現し、仕事とプライベートの両方を充実させることができます。また、協力的なチームワークやコミュニケーションの活性化も促進され、従業員間の連携や協力関係が深まります。こうした要素が従業員の満足度を高め、モチベーションや忠誠心の向上につながります。

 

・自社のイメージアップ

ワークシェアリングの導入は、企業のイメージ向上にも寄与します。

労働者の負担軽減やワークライフバランスの改善に取り組む姿勢は、社会的な責任や従業員への配慮をアピールする重要な要素となります。従業員が働きやすい環境を提供し、個々の能力を最大限に生かす取り組みは、他社との差別化や競争力の向上にもつながります。

また、社会的な関心事や法規制の中で、持続可能な労働環境を実現する企業としてのイメージ向上にもつながります。ワークシェアリングの導入は、労働者の健康と福利厚生に配慮した取り組みであり、企業が社会的な責任を果たしていることを示す重要な要素となります。近年、持続可能なビジネス活動が求められており、従業員の働き方改革やワークライフバランスの実現はその一環として注目されています。ワークシェアリングの導入により、企業は社会的な期待に応えるだけでなく、優れた雇用主としての評価を得ることができます。従業員や顧客、株主など、企業と関わる様々なステークホルダーからの支持を受け、企業イメージの向上とブランド価値の向上につながるでしょう。持続可能性と社会的な責任を重視する企業は、人材の確保や競争力の維持においても優位性を持つことができます。

 

◆従業員側のメリット

・ワークライフバランスの充実

ワークシェアリングは労働時間や業務負荷を複数の人で分け合うため、個人の負担が軽減されます。

労働時間の柔軟性が高まり、仕事とプライベートの両立がしやすくなります。これにより、ストレスや疲労の軽減、家族や趣味、自己の成長に充てる時間を確保することができます。

 

・就業機会の増加

ワークシェアリングは1つの仕事を複数の従業員で分担するため、雇用機会が増えます。従来は1人で担当していた仕事が複数の人で分けられるため、新たな雇用が創出されます。これにより、雇用の安定や再雇用の機会が増え、失業のリスクが低下します。また、異なるスキルや経験を持つ人々が仕事を共有することで、多様な人材が活躍する場が広がります。

 

ワークシェアリング導入のデメリット

◆企業側のデメリット

・制度を見直す手間がかかる

ワークシェアリングを導入するためには、既存の労働制度や雇用契約、労働時間管理などの制度を見直す必要があります。

これには時間と労力がかかり、組織全体の合意形成や調整が必要となります。制度変更による手続きや文書作成、関係者との調整など、適切な準備と管理が求められます。

 

・一部のコストが増加する

ワークシェアリングの導入には、追加のコストが発生することがあります。

例えば、複数の従業員を配置するための設備や環境の整備、コミュニケーションや調整のためのツールやシステムの導入、引き継ぎや研修の費用などが含まれます。また、複数の従業員に対して給与や手当、福利厚生の提供が必要になる場合もあります。これらの追加コストは、導入前と比較して財務的な負担となる可能性があります。

 

◆従業員側のデメリット

・収入の減少

ワークシェアリングでは、1つの仕事を複数の従業員で分担するため、個々の従業員の労働時間や勤務日数が減少する場合があります。その結果、収入も減少する可能性があります。例えば、従来はフルタイムで働いていた従業員がパートタイムの時間に削減される場合などがあります。ワークシェアリングによる収入減少は、生活費や経済的な安定性に影響を及ぼす可能性があります。

 

・従業員間の賃金格差の発生

ワークシェアリング導入によって、従業員間の賃金格差が発生する可能性があります。これは、ワークシェアリングの対象となる業務と、対象外の業務を担当する従業員の間で賃金に差が生じることを指します。

ワークシェアリングでは、1つの仕事が複数の従業員で分担されます。そのため、ワークシェアリングの対象となる業務を担当する従業員と、対象外の業務を担当する従業員との間で、労働内容や労働時間の違いによって賃金に差が生じる可能性があります。

 

ワークシェアリングの種類

◆雇用維持型(緊急避難型)

このタイプのワークシェアリングは、経済的な危機や予期せぬ事態に直面した際に、一時的な雇用維持を目的として導入されます。

例えば、景気後退や自然災害などの影響により企業の業績が悪化した際に、従業員の解雇を避けるため一時的に仕事を分担します。

これにより、雇用を維持しながら業績回復を待つことができます。

 

◆雇用維持型(中高年対策型)

このタイプのワークシェアリングは、中高年の従業員の雇用維持や再雇用の促進を目的として導入されます。従業員のキャリア終盤や退職前の段階で、仕事を複数の従業員で分担することにより、長く働ける環境を提供します。経験や知識を活かしながら働き続けることができ、雇用の安定性と生産性の向上が期待されます。

 

◆雇用創出型

このタイプのワークシェアリングは、雇用の創出と新規参入者の受け入れを目的として導入されます。複数の従業員が同一の仕事を分担することで、時間や能力の制約を克服し、新たな雇用機会を生み出します。特に雇用の厳しい状況や若年層の雇用促進に寄与し、労働市場の活性化を図ります。

 

◆多様就業型

このタイプのワークシェアリングは、働く人々の多様な働き方やライフスタイルに合わせた柔軟な就業環境を提供することを目的として導入されます。例えば、育児や介護などの個人の都合に合わせて、仕事を複数の従業員で分担することにより、ワークライフバランスを実現します。フルタイムで働けない従業員にとっても、ワークシェアリングの導入は柔軟な働き方の実現に役立ちます。例えば、パートタイムで働く従業員が仕事を複数の人と分担することで、週の労働時間を調整しやすくなります。これにより、個人のニーズや生活スタイルに合わせた就業が可能となり、従業員の満足度や働きやすさが向上します。

さらに、多様就業型のワークシェアリングは、従業員のスキルや能力を最大限に活かすことができる利点もあります。異なるバックグラウンドや専門知識を持つ従業員同士が連携し、チームの力を最大限に発揮することができます。これにより、企業の競争力やイノベーション力が向上し、従業員のやりがいやモチベーションも高まるでしょう。

ワークシェアリングの多様就業型は、働く人々の多様な働き方を尊重し、柔軟な労働環境を提供することで、従業員と企業の双方にメリットをもたらします。

 

ワークシェアリングを導入するための手順

◆ステップ1: 現状の把握

・各ポジションの業務内容や負荷を詳細に調査し、従業員の業務負担や労働時間の実態を把握します。

・労働環境やストレス要因、業務の重要度や優先度などを分析し、改善のポイントを特定します。

・従業員の意見やフィードバックを収集し、ワークシェアリングの導入に対する関心や課題を把握します。

 

◆ステップ2: ワークシェアリングの選定

・従業員の業務内容やスキルセット、業務の特性を考慮して、ワークシェアリングに適した業務を選定します。

・業務の重要度や影響度、協力が必要なポジションなどを考慮し、ワークシェアリングの適用範囲を決定します。

・ワークシェアリングのメリットを最大化するために、業務の分担方法や役割分担のルールを策定します。

 

◆ステップ3: 業務のマニュアル化

・選定した業務について、具体的な業務手順や責任範囲を明確化するために、業務マニュアルを作成します。

・マニュアルには、業務の目的や詳細な手順、連絡方法や共有する情報、報告のルールなどを記載します。

・マニュアルは継続的に見直し、変更や改善が必要な場合には迅速に反映します。

 

◆ステップ4: 導入後の定期的な確認と改善

・ワークシェアリングを実際に導入しただけで終わりにせず、従業員からのフィードバックや業績の評価を行うことが重要です。

・定期的なミーティングや面談を通じて、業務の効率性や従業員の満足度を評価し、課題や改善点を把握します。

・必要に応じてマニュアルの見直しや調整を行い、効果的なワークシェアリング環境を維持・改善していきます。

 


近年、働き方改革が進む中で、ワークシェアリングの重要性はますます高まっています。

ワークシェアリングを導入する際には、事前の準備が非常に重要です。導入の目的により、最適なタイプが異なるため、なぜワークシェアリングを導入するのか、どのような課題を解決するのかを慎重に検討する必要があります。

 

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