労働政策研究・研修機構によると、「情報通信機器を利用した多様な働き方の実態に関する調査結果」において、テレワークにおけるデメリットとして「仕事とプライベートの切り分けが難しい」と「長時間労働になりやすい」という回答が多く挙げられているようです。
テレワークにおけるメンタルヘルスのリスクとしては、以下のようなものが考えられます。
テレワークでは、オフィスで働いている場合と比較して、同僚とのコミュニケーションや交流が減るため、孤独感や孤立感を感じることがあります。特に、新しい職場に移ったばかりでまだ同僚との人間関係が築けていない場合や、家庭にいる時間が増えている場合には、その感覚が強まる傾向があります。
テレワークでは、自宅などで作業をするため、作業とプライベートの境界線が曖昧になりがちで、長時間作業をしてしまうことがあります。特に、テレワークをする場所が家庭内である場合には、家庭のことや子育てのことなどが気になって、作業に集中できないこともあります。
テレワークでは、上司や同僚とのコミュニケーションがオフィスで働いている場合よりも減ることが多く、問題や不安を共有しにくくなります。例えば、オフィスであれば隣の席の同僚に簡単に相談したり、上司に直接質問したりすることができますが、テレワークではそれが難しくなることがあります。
テレワークでは、周囲の刺激が少なくなるため、モチベーションが低下することがあります。例えば、自分自身でやるべきことを見つけることが難しく、仕事の意義や目的を見失ってしまうことが挙げられます。
テレワークでは、通勤時間がなく外出が減るため、運動不足や不規則な食生活になることがあります。例えば、自宅にいる時間が長くなることで、運動不足になってしまったり、間食が増えてしまったりすることが挙げられます。
テレワークでは、個人のパソコンやスマートフォンを使って作業するため、情報漏えいなどのセキュリティ上のリスクがあります。そのため、セキュリティ対策が必要です。
テレワークでは、オンラインミーティングやチャットツールなどを使ったコミュニケーションが増えるため、テクノストレスやデジタル疲れが発生することがあります。例えば、スクリーンに長時間集中することで、目の疲れや頭痛が発生することが挙げられます。
テレワークでは、家庭内の問題が仕事に影響することがあります。例えば、同居する家族の騒音や、子どもの世話が必要な場合、家庭内でのやりとりが仕事に支障をきたすことがあります。
テレワークでは、自宅という環境で仕事をすることで、家庭と仕事のバランスが崩れることがあります。自宅にいる時間が増え、仕事とプライベートの切り分けが難しくなります。
安全配慮義務違反が生じる場合
労働者がケガや病気になった際、企業が安全配慮義務違反となるのはどのようなケースでしょうか。安全配慮義務違反とは、労働者の心身の健康に影響がある可能性があったにもかかわらず、企業がそれを回避するための措置を講じなかった場合に該当します。このため、長時間労働や劣悪な労働環境の維持、リスクの把握にもかかわらず対策を講じないことは、重大な違法行為につながる可能性があるのです。
また、安全配慮義務違反にはメンタルヘルスに関する問題も含まれます。メンタルヘルスに不適切な状況が生じると、従業員の事故の原因になるだけでなく、最悪の場合自殺につながることもあります。そのため、企業は従業員のメンタルヘルス状態を定期的に把握し、個別のケアを提供することが必要です。具体的には、労働時間や業務負荷、人間関係によって、従業員が過度のストレスを抱えていないかを常に確認することが大切です。また、急な休暇が必要となる従業員には、個別の面談や休暇の取得など、早期に対応することが求められます。
テレワークにおいて、労働者が快適かつ安全に作業を行うためには、適切な作業環境の整備が欠かせません。例えば、適切な作業スペースの確保や、照明・換気の確保、作業机や椅子などの適切な家具の使用が挙げられます。また、厚生労働省が推奨するテレワーク環境を参考に、会社側が環境面の整備をサポートすることも重要です。これにより、労働者に対する安全配慮義務を適切に果たし、テレワークによる健康リスクを低減することができます。さらに、労働者に対して適切な作業環境の整備に関する周知教育を行うことで、自らも作業環境の改善に努めることができるようになります。
テレワークに必要な設備を確保することが重要です。例えば、パソコンやインターネット環境、プリンターなどが必要になる場合があります。
作業に適した机や椅子を用意することが重要です。背もたれのある椅子や高さ調節が可能な机など、自分に合ったものを選びましょう。
テレワークの場合、自宅やカフェなどで作業することが多いですが、作業スペースを確保することが大切です。家族やペットが邪魔にならないように、静かで落ち着いた場所を選びましょう。
作業スペースの照明や換気にも注意が必要です。適切な明るさや風通しの良さを確保し、長時間の作業にも耐えられる環境を整えましょう。
デスク周りを整理整頓することも大切です。必要なものは手の届く範囲に置き、作業効率を上げるように心がけましょう。
テレワークでは、長時間同じ姿勢で作業をすることが多くなるため、適度な運動やストレッチが必要です。運動によって血流を促進することで、筋肉の緊張を緩和し、疲れを解消することができます。また、ストレッチによって身体を柔軟に保つことも重要です。定期的に運動やストレッチを行うことで、体調管理につながります。
テレワークにおいて、仕事とプライベートの区別が曖昧になり、労働時間が増えてしまうことが懸念されます。このような問題を解決するためには、こまめな休憩を取ることが重要です。具体的には、50分の仕事に10分の休憩を設けるなど、ルール化された休憩時間を設けることが有効です。さらに、ビデオ会議などで、ストレッチや深呼吸の方法を提供することで、従業員の疲れを軽減することができます。また、自宅で仕事をしている場合は、定刻に仕事を終えることが難しい場合もあるかもしれません。このような場合は、時間を区切って仕事を行うことを心がけることが重要です。たとえば、仕事の開始と終了を明確に決め、定刻に仕事を切り上げることで、仕事とプライベートのバランスを取ることができます。
テレワークにおいても、使用者は従業員の健康確保のために過重労働対策やメンタルヘルス対策を含む措置を講じる義務があります。特に、ストレスチェックや健康診断、長時間労働者に対する面接指導を実施し、その結果に基づく対策が重要です。安全配慮義務を果たすためには、最低限の措置であるストレスチェック、法定の健康診断、長時間労働者に対する面接指導を必ず実施し、必要な記録を残すことが必要です。
特に、テレワーク環境ではストレスチェックが重要であり、メンタルヘルス対策に効果的です。労働者自身が自分自身のストレスに気づき、ケアを行うことで、メンタルヘルス不調を未然に防止することができます。また、ストレスチェックの結果を分析し、職場環境の改善にも役立てることができます。
「ラインケア」とは、職場の管理監督者が労働者の心の健康に関する相談対応や職場環境の改善を行うことを指します。
テレワークにおいては、オフィスと異なり、直接上司や同僚と顔を合わせることができないため、孤独感や孤立感を感じやすく、ストレスがたまりやすい環境にあります。
このような状況を改善するためには、オンライン会議を定期的に開催し、直接話す機会を設けることが有効です。
また、雑談を交えて労働者に安心感を与え、コミュニケーションをスムーズにすることが大切です。
さらに、メンタルヘルス不調に陥っている従業員には、相談がしやすい雰囲気を作り、必要なサポートを提供することが求められます。
このような取り組みを行うことで、労働者のストレス軽減やメンタルヘルスの向上につながることが期待されます。