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退職勧奨や解雇に至った場合にトラブルを避けるための手順

経営者や人事担当者から、従業員の能力不足や適格性の問題による解雇に関する相談が多く寄せられます。

解雇を行う場合、十分な指導や支援、配置転換などの努力を行ってから判断することが重要です。その上でも改善が見られない場合、解雇理由を本人に十分に説明することが必要です。能力不足を理由とする解雇は、従業員と企業の認識に相違が生じることがあり、不当解雇や裁判トラブルのリスクがあるため、慎重に進める必要があります。

「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、毎年退職勧奨でのトラブルの相談が一定数以上あるようです。

グラフ

引用/「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況

 

退職勧奨とは

退職勧奨とは、雇用主が労働者に対して退職を促す行為を指します。退職勧奨は通常、会社都合によって行われるため、「会社からの働きかけによる退職」という点で解雇と同様の性質を持ちます。ただし、退職勧奨は雇用主と労働者の双方の同意を前提とするため、一方的な意思表示に基づく解雇とは法的に異なる雇用契約の解消方法とされています。

退職勧奨が行われるケースには、以下の2つがあります。

・経営不振による人員削減の必要がある場合
・労働者の能力や適格性不足や勤務成績の低下などが著しい場合

 

退職勧奨のメリットとしては、従業員自身から退職意思を引き出すことを目的としているため、法的なリスクを最小限に抑えることができることにあります。退職合意の存在により、後のトラブルを回避することができることにあります。

一方デメリットとしては、あくまで退職は従業員の「任意」の手続きになるため、会社がどれだけ退職を促しても、従業員が「退職します」と言わない限り、雇用を終了させることはできないため、手続きまでに長期間かかる可能性があります。

 

退職勧奨でトラブルを起こさないポイント

事前に話し合いを行う

退職勧奨を行う前に、本人と直接話し合いを行い、その人がどのような状況にあるのかを確認する必要があります。その人が今後どのような目標を持っているのか、現在の仕事に不満を持っているのか、その他の状況を知ることで、どのようにアプローチすべきかを判断できます。

 

勧奨理由を明確にする

退職勧奨の理由を明確に伝えることが重要です。理由を具体的に説明し、退職が本人にとっても会社にとっても最善の選択であることを説得する必要があります。

従業員側に問題がある場合、会社としても雇用継続のための努力をしたことを伝えることが必要です。

 

勧奨内容を適切に伝える

退職勧奨に伴う内容を明確に伝えることも大切です。退職時期、手続き、退職金、失業保険などの情報を適切に伝えることで、本人が退職後の生活をスムーズに過ごすことができるようにサポートします。口頭ではなく書類での説明が有効です。

 

プライバシーを尊重する

退職勧奨に関する情報は、本人以外に漏れないように注意する必要があります。退職勧奨が本人にとってプライバシーに関わる問題である場合、情報の管理には特に気を配る必要があります。

 

退職を強要しない

「退職強要」に該当するような暴言や脅迫が行われた場合、または暴力行為などがあった場合、労働者は会社に対して損害賠償請求を行う可能性が出てきます。従業員には身体的なダメージをもたらす暴力行為だけでなく、退職を強要する発言による精神的なダメージも生じる可能性があるため、注意が必要です。

複数回、長時間にわたる退職勧奨は避けるべきです。

 

従業員が退職勧奨に応じなかった際の対応方法

再説明してみる

従業員が退職勧奨に応じない理由として、退職後のキャリアプランが不透明であることがあります。しかし、従業員が留まる理由や将来的な希望など、不透明な点がある場合もあります。従業員の意見を尊重し、退職勧奨の条件を丁寧にわかりやすく再説明することも有効です。

 

退職勧奨のタイミングを見直す

従業員が退職勧奨に応じない理由として、現在の状況や環境が不安定であることが考えられます。従業員の状況を把握し、退職勧奨を行うタイミングを見直すことで、従業員が応じやすくなるかもしれません。

 

退職勧奨に応じてもらうための条件を見直す。

退職金の増額や再就職先のあっせんなど、退職勧奨に応じてもらうための条件を見直し再度退職勧奨を行う。

 

従業員の状況に合わせたカスタマイズ対応

退職勧奨は、従業員の状況に合わせたカスタマイズ対応が求められます。例えば、従業員が家庭の事情で転居を考えている場合には、引越し費用の支援や転居先での就職支援を提供することができます。従業員の状況に合わせたカスタマイズ対応を行うことで、退職勧奨に応じてもらいやすくなります。

 


退職勧奨は、解雇を回避する有効な手段の一つですが、適切な対応をしないと莫大な損害賠償請求などの問題に発展する可能性があるため、慎重に進める必要があります。

退職勧奨のポイントを押さえ、個々の事情を考慮しながら慎重に進めることで、円滑な退職につなげられる可能性が高くなります。

 

退職勧奨や解雇に至った場合にトラブルを避けるための手順