労働者のメンタルヘルス不調は、現代社会における深刻な問題の一つであり、企業にとって従業員のメンタルヘルス対策は最大の経営課題でリスクマネジメントのひとつといえるでしょう。
厚生労働省「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」の調査結果によると、精神障害等の労災認定件数は年々増えています。
また、連合の「コロナ禍における職業生活のストレスに関する調査2022」によると、「コロナ禍前と比べて、現在、自分の仕事や職業生活に関してのストレスに変化があったか」との問いに、「ストレスが増えた」との回答が36.6%となっており、テレワーク勤務者のメンタルヘルス対策も重要となっています。
引用/連合「コロナ禍における職業生活のストレスに関する調査2022」
ストレスを適切に管理することができないと、メンタルヘルス不調のリスクが高まります。企業は、定期的なストレスチェックを実施することで、従業員のストレスレベルを把握し、ストレスの原因を特定して改善策を検討することができます。
メンタルヘルスに関する正しい知識を身につけることは、一次予防につながります。企業は、従業員向けにメンタルヘルスに関するオンライン教育を提供することで、従業員が自己管理しやすい環境を整備できます。
労働時間や勤務スタイルなど、従業員が働きやすい環境を整備することも、一次予防につながります。企業は、フレキシブルな労働時間や在宅勤務の導入など、従業員のワークライフバランスを考慮した取り組みを実施することができます。
メンタルヘルスの二次予防は、早期に問題を発見し、適切な治療を受けることで、症状の進行を防ぐことが目的です。以下は、二次予防のための対策例です。
企業において、定期的にストレスチェックを実施することで、従業員のメンタルヘルス状態を把握し、早期に問題を発見することができます。必要に応じて、専門家による相談支援や治療の提供を行うことが重要です。
カウンセリングは、ストレスや不安、うつ病などの精神的な問題に対する治療法のひとつです。企業においてカウンセリングの提供を行うことで、従業員が抱えるメンタルヘルスの問題を早期に発見し、治療につなげることができます。
病院や診療所などでは、精神科専門医による診察が行われます。精神科専門医は、うつ病やパニック障害、統合失調症などの精神疾患に詳しく、早期の診断や治療を行うことができます。
メンタルヘルス不調によって、仕事などの日常生活に支障をきたすことがあります。社会復帰支援によって、従業員の社会復帰を支援し、再発のリスクを減らすことができます。
メンタルヘルスの3次予防には、職場復帰を支援することが重要です。以下に対策例をいくつか紹介します。
企業が従業員に対して、職場復帰支援プログラムを提供することで、復帰をスムーズに進めることができます。具体的には、専門家によるカウンセリングやリハビリテーションプログラム、復帰後の職場環境への適応支援などが挙げられます。
復帰前の段階で、従業員が自宅で過ごす時間の中でも、心身の回復に役立つ支援を提供することができます。具体的には、在宅勤務や短時間勤務、療養期間中の休暇制度の活用などが挙げられます。
従業員がメンタルヘルス不調によって失った自信を回復し、社会復帰を支援することも重要です。具体的には、社外での趣味やボランティア活動の支援、専門家によるキャリアカウンセリングの提供などが挙げられます。
「心理的安全性(psychological safety)」は、チームや組織に所属するメンバーが、自分の意見やアイデアを自由に表明し、質問や提案を行うことができ、そして、誤りや失敗を恐れずに率直なコミュニケーションをとることができる状態のことを指します。
具体的な事例として、心理的安全性の低い状況では、メンバーが意見を出しにくく、チーム全体の意見の幅が狭まることがあります。また、失敗やミスを恐れるあまり、問題のあるアイデアや行動が放置され、解決が遅れることがあります。一方、心理的安全性が高い場合、メンバーは自由に発言することができ、誤りやミスに対しても共同で問題解決に取り組むことができます。
例えば、Googleは心理的安全性の重要性を認識し、社内のチームで心理的安全性を高めるための取り組みを行っています。その結果、心理的安全性が高いチームは、生産性や創造性が高く、成功率も高いことがわかっています。
心理的安全性は、組織の文化やリーダーシップによっても大きく影響されます。リーダーが心理的安全性を高め、メンバーが自由にコミュニケーションをとり、アイデアを出し合い、失敗から学ぶことを推進することで、より成果の出るチームや組織を作り上げることができます。
心理的安全性が高い職場には以下のようなメリットがあります。
心理的安全性が高い職場では、従業員たちは自分の考えや意見を自由に表明できるため、チーム全体のコミュニケーションが改善されます。従業員同士の対話が活発化し、アイデアのやり取りや問題解決がスムーズに行われるようになります。
心理的安全性が高い職場では、従業員たちは自分自身を表現でき、自分の仕事に責任を持つことができます。このような環境で働くことで、従業員たちは自信を持ち、仕事への取り組み方が変わり、より高いモチベーションで仕事に取り組めるようになります。
心理的安全性が高い職場では、従業員たちは新しいアイデアを提供しやすく、チャレンジングなプロジェクトに参加しやすくなります。このような環境で働くことで、チーム全体でイノベーションを促進することができ、企業の競争力を高めることができます。
心理的安全性が高い職場では、従業員たちはストレスを感じることが少なくなります。自分自身を表現でき、チームメンバーとコミュニケーションがスムーズに行えることで、仕事に対するストレスを軽減することができます。このような環境で働くことで、従業員たちは健康的な働き方ができるようになります。
職場内でのコミュニケーションを促進することで、社員同士の関係性を強め、オープンで透明性のある職場環境を作り出すことができます。また、上司や同僚とのコミュニケーションを通じてフィードバックを受け取る機会が増えるため、個人の成長にもつながります。
組織の価値観や方針を明確にし、社員に共有することで、職場内における行動基準を統一することができます。これにより、社員同士の意識のズレを防ぎ、職場全体での協調性を高めることができます。
社員の個人情報やプライバシーを尊重することは、信頼関係を築く上で非常に重要です。
ストレスやメンタルヘルスの問題を抱える社員に対して、適切なサポートを提供することが必要です。職場内でのカウンセリングやストレスマネジメントの研修などを通じて、社員が健康で生産的な状態を維持できるよう支援することが重要です。
社員の業績を公正に評価することは、心理的安全性を高める上で不可欠です。公正な評価を行うことで、社員同士の競争や嫉妬を防ぎ、成果を出せる環境を作り出すことができます。
メンタルヘルスケアの目的は、従業員の心身の健康を維持し、ストレスやメンタルヘルスの問題を早期に発見して適切な対応をすることです。
メンタルヘルスケアが重要な理由は、従業員のメンタルヘルスが悪化すると生産性が低下したり、モチベーションが低下したり、長期的な休職や退職に至る場合もあるためです。従業員のメンタルヘルス不調は、組織にとっても深刻な問題となります。
企業と従業員が協力し合い、メンタルヘルスケアに取り組むことで、従業員のメンタルヘルスを維持し、生産性やワークライフバランスの改善を促進することができます。